Dynabook(ダイナブック)構想からはじまったパソコンの歴史

現在、一般的に利用されているパソコンは、どんどんコンパクトになっているようです。

しかし、性能はどんどんアップしています。特に、持ち運び事が前提であるノートパソコンは、新しいタイプが発表されるたびに、その薄さに驚く事が、ほぼお決りの出来事となっています。

企業で、一般的に利用されるようなコンピューターが登場して、間もない時代には、机の上を丸ごと占領していた、大型の機器が、現在のような姿になる事を、予想する事ができたでしょうか?

実は、それを予想していた人がいました。

 

アメリカの科学者で、教育者で、ジャズの演奏家でもあった「アラン・ケイ」が、その人です。

まだ、パソコン(パーソナル・コンピューター)と言う用語さえ、存在していなかった1972年の事です。

この人が構想した、将来のコンピューターの利用環境のあるべき姿として、考えたのが「Dynabook(ダイナブック)構想」です。

 

Dynabook構想とは?

この構想では、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)の機能を搭載して、だれでも簡単に操作が出来る上に、非常にコンパクトで、片手でも持てるようなコンピューターを、低価格で提供する事を提案しています。

そして、そのDynabookで扱う事のできる情報としては、文字や、映像や、音声も含めたほとんど全ての情報を対象としています。正に、現在の状況を、そのまま予知したような構想です。

 

その後、アメリカのXerox(ゼロックス)社の研究所で、この構想に基づいて、いくつかの試作品を完成させるところまでは実現しました。

この試作品には、今のパソコンでは、当たり前の機能である「GUI」環境で利用できるシステムが搭載されていました。

そして、いわゆるデスクトップ型と、バッテリーで駆動できる、ノート型のタイプを開発しました。

 

残念ながら、一般的に製品化するまでは行きませんでしたが、デスクトップ型のDynabookを、ヒントにした製品が、他社から生まれました。

この研究所へ見学に来た事により、GUI環境の開発を思いついた、スティーブ・ジョブズ氏が経営するApple社から、後に販売される事になるパソコンのシリーズである「Macintosh」がそれです。

Dynabook環境の実現には、多少の時間が必要だったようです。

 

Dynabook構想の実現

パソコンを利用して、何らかの作業を行う際には、どのような動作が必要でしょうか?

通常は、アプリケーションの起動、必要なファイルを開く、作業の結果を保存、と言うような動作を、モニターの中に表示されているウィンドウや、各種のメニューを表示させる事で行っています。

そのウィンドウが狭いと思えば、クリックした状態で、マウスをずらす事で、必要な大きさへ広げる事が可能です。

このような基本的な動作は、ほとんど全てが、Dynabook構想で提案されている内容を実現したものです。

また、Dynabook構想では、現在では一般的な機能である、コンピューターによるネットワークの活用なども、提案されていました。

 

すでに、現在のパソコンによって、この構想で提案されている理想はほぼ実現できたようです。

しかし、本来の構想では、システム(OS)自体を、自由にカスタマイズできるような柔軟性を求めている部分は、未だに実現する事ができていません。

現在利用しているOSの姿を自由に変更して、新しいシステムを作り出す事ができるようなる時代が、将来やって来るのでしょうか?

それにしても、この構想が、現在のパソコンの利用環境を、これほど正確に言い当てている事にはだれでも驚くのではないでしょうか?

 

Dynabook構想は小さなタネ

すでに、種まきから、かなりの時間が経過したDynabook構想ですが、かなり大きな木が育ったようです。

しかし、まだまだ成長する余地もありそうです。現在の状況では、実際にパソコンを利用する人は、ある程度の年齢層に限られている現状があります。

もともと、Dynabook構想では、子供でも簡単に利用できるような環境を目指していました。

 

確かに、その面では、すでにゲーム機や、スマートフォンなどの普及によってほぼ実現できたと言えます。

後は、最も構想から縁遠いと言える高齢者にも、簡単に利用できるタイプのDynabookの登場が、必要ではないでしょうか?

そのためには、利用する世代に合致したGUI環境の開発が、必要になると思われます。

決して、困難な事ではないでしょう。

そうしなければ、高齢者のみが、現在のデジタル化の恩恵を受ける事なく、一生を過ごす事になります。